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医師の組織コミットメント・キャリアコミットメント・職務満足に関する実証分析

2012年に行われた日本病院会の「病院の人材確保・養成に関するアンケート調査」で、実に76.8%の病院が医師不足であると回答していて、病院が医師確保に難渋していることがわかります。
医師不足の状況を改善するために、医師が安定して勤務できる環境を整えることは医療現場において喫緊の課題だと言えます。
医師の離職に関する先行研究で、病院に対するコミットメントの充足と同時に、仕事とキャリアの満足度が高ければ離職希望が少なくなるという結果があります

 

そこで今回、医師としての組織コミットメントとキャリアコミットメント、さらに組織満足の3つの関係性を実証分析することで、定着率の高い環境を作ることができるのではないかと考え、実証分析を行いました。

定義付け

1.組織コミットメント

組織コミットメントは職務満足度よりも離職に結びつくものであり、組織コミットメントが高くなれば人材の職場への定着が図れるとされています。
組織コミットメントにはいくつかの側面がありますが、今回は情緒的コミットメントと功利的コミットメントの2つに絞って実証しました。

 

2.キャリアコミットメント

キャリアコミットメントとは専門を含めた自分の職業への態度であり、勤務する医療機関が変わっても一生を通じて追及する専門分野への志向性を表します。
今回の研究では、医師自らが取得したい分野での専門的な見識や技術の習得、経験ととらえました。

 

3.職務満足

職務満足は、仕事・職場全体に関する個人の印象を測る全体的職務満足と、就業上の個人の評価を測る個別的職務満足の2つがあります。
ここではキャリア、対人関係、能力発揮のそれぞれの満足感と全体的職務満足の4つに分けてとらえています。

 

仮説

分析の前に、先行する研究結果から以下のような仮説を立てました。

仮説1-1 キャリアコミットメントが高くなれば、組織コミットメント(情緒的)も高くなる。
仮説1-2 職務満足が高くなれば、組織コミットメント(情緒的)も高くなる。
仮説2-1 キャリアコミットメントが高くなれば、組織コミットメント(功利的)も高くなる
仮説2-2 職務満足が高くなれば、組織コミットメント(功利的)も高くなる。

 

調査方法

民間病院や国公立病および診療所などに勤務する医師を対象に、調査票配布とWeb調査の2種類で30項目のアンケート調査を実施し、調査票による回答154名、Webによる回答8名の計162名から回答を得て分析しました。

 

調査結果と考察

1.キャリアコミットメント・職務満足と組織コミットメント(情緒的)の関係性

回答を分析した結果、キャリアコミットメント・職務満足と組織コミットメント(情緒的)との関係に統計的に有意な値が見られ、キャリアコミットメントや職務満足が高くなれば、組織コミットメント(情緒的)も高くなる、という仮説1-1、1-2はどちらも証明されたと考えます。

 

このことから、医師としてのキャリアや専門分野の継続といったキャリアコミットメント、医師の業務としての技能や能力発揮といった職務満足は病院に対しての愛着などに繋がるということが言えます。

 

2.キャリアコミットメント・職務満足と組織コミットメント(功利的)の関係性

一方、キャリアコミットメントと組織コミットメント(功利的)の関係を表す数値では、統計的な有意差はありませんでした。
このことから、キャリアコミットメントの高さが組織コミットメント(功利的)には影響を及ぼすことがないと言えるので、仮説2-1は棄却されました。
この理由は、医師が専門職であることと組織的コミットメント(功利的)が持つ性質にあると推測されます。

 

組織コミットメント(功利的)は、2つの側面を持っています。

1つは、コミットメントに対しての対価があるという理由で組織にコミットするといった単純な交換関係という側面です。
また一方で、これまで投資した価値があるからこそ組織を離れることができないという面もあります。
それまで勤務していた会社を辞めることで身に付けてきた技能やスキルがゼロになってしまう、という場合は、時間的な投資の観点から功利的組織コミットメントが高くなります。
しかし、専門職である医師の場合は、ある病院を辞めても技能やスキルがゼロになることはありません。

 

こうした理由によって、キャリアコミットメントが高くなっても組織コミットメント(功利的)は高くなるとはいえないと考えることができます。
また、職務満足と組織コミットメント(功利的)の間には統計的に有意な値が見られ、職務満足が高ければ組織コミットメント(功利的)も高くなるという仮説2-2は証明されました。

 

3.年齢、勤務先による分析
組織コミットメント(情緒的)は、年齢が上がるにつれて上昇しますが、40~50歳でほぼ一定になり、その後再上昇するという値になりました。
組織コミットメント(功利的)は50歳を過ぎるまではほぼ一定であり、50歳を過ぎて上昇する値になりました。
また、キャリアコミットメントは35歳から55歳までは緩やかに減少し、それ以降上昇し、職務満足は全年齢を通してほぼ一定の値になりました。

 

このことを総合的に分析すると、30~34歳よりも中堅層と言われる40~44歳は病院に対して愛着を持つ傾向にあり、幹部層である55~59歳ではさらに病院に対するコミットメントが強まっていることが読み取れます。
また、民間病院と国公立病院を比較してみると、民間病院の方が職務満足、組織コミットメントの両方の値が高くなるという結果になりました。

 

これは、公的な機関である国公立病院よりも民間病院の方が医師の定着率を向上させるために、より積極的に人的な資源の管理を行っているからだと考えることができます。

 

総括

今回の実証分析によって、医師の職務満足は、情緒的・功利的の2つの組織コミットメントにポジティブな影響を与えることが証明されました。
職務に満足感を得ている医師は、労働時間と給与の間のバランスや、同僚医師との間に構築される協力体制、部下に対する上司の手腕評価などを通して、自分の能力が発揮できていると感じています。

 

以上のことから、医師の定着率を向上させるために、医師として技術を磨くことができる環境を整えてキャリアコミットメントを高め、職務満足を高めるために快適に診療業務を行うことができると同時に、仕事に対する成果を適正に評価できるような仕組みを整えることが必要だと考えられます。

 

課題

今回の結果を踏まえ、今後の研究課題として以下の4つが挙げられました。

 

まず、調査Webの事例が少ないことから、今回の調査の手法や分析の妥当性を、従来の研究と比較して判断する必要があります。
また、臨床や研究、教育機関といった様々な側面を持つ大学病院などの医療機関と、臨床が主体となっている医療機関における影響因子の違いについても考慮する必要がある。
さらに、今回は勤務医師のみを対象とした調査であり、医師以外の医療職においての検証がなされていません。

 

今後、医療職の業種間において幅広く調査することによって、病院においての組織コミットメント・職務満足・キャリアコミットメントの全体像が見える可能性があります。
加えて職務満足と組織コミットメントに着目したクラスタ分析を行うことによって、より詳細な特徴を掘り下げることができると考えています。
これらに関して今後改めて検討を加えていくこととします。

 

医師の組織コミットメント・キャリアコミットメント・職務満足に関する実証分析
http://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/3-2/249.pdf

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